reflects of memory
First solo exhibition 2023 -Alt_Medium gallery –
黄色いマフラー / 黄色いボーイ ヘルシンキの中心駅。東京で行ってらっしゃいをして以来の父と待ち合わせをしました。 開口一番「何だそのマフラー、探すまでもなくそのマフラーが目に入ったよ。」と言われました。 そう言いながらこぼれた数ヶ月ぶりの見慣れた笑顔に、自分の表情も投影されているように思えました。 黄色のマフラーが、何度でもその瞬間を甦らせてくれます。
兵隊さんの白シャツ / ロンドンファッションウィーク「君のことを撮ってもいいかい?」と声をかけられました。「もちろん」と応えます。「あなたのことを撮ってもいいですか?」と私も尋ねました。その後はもう、この繰り返
し。なぜならあなたがとても素敵だから。理由はそれだけ。そこは人と人が認め合う場所でした。
青色のニット / パリの街角 あなたはとっても可愛いわ。君はファッショニスタだよ。そう、まるで子供へ語りかけるように。
安いグラスの赤ワインしか飲まない語学学校の先生と、フィッシュアンドチップスしか食べない、母より年上の赤髪の女性に、よくそう言われていました。
三人で通ったパブでこの青色のニットは、先生お決まり赤のグラスワインと彼女の赤髪に、一際見栄えたのかもしれません。良い相性だったんだと今なら思えます。
この青色は、大切な日々を映し出します。
プリーツスカート / 僅かなひと時 パリから帰国して少し、パリで生まれた服をいただきました。それぞれの時を経てすれ違い巡り会う。 私はあなたの故郷に想いを馳せることができることを、心から嬉しく思いました。
シャイニーブラウス / ロンドンの学校 様々な国から集まるクラスでチームメイトになった彼女に、大好きな写真のコラージュを見せて、私はこんな作品にしたいんだとイメージを伝えました。その時には正直、ちゃんと伝えられたのかわかりませんでした。 翌日、様々なピンクや白のバルーンと、バルーンを膨らますボンベが教室に置かれていました。 彼女が袋を持って現れて、こんなのも、こんなのもあるの! とピンク色のドレスやスパンコールの布切れを見せてくれました。 そこには確かに、私たちの心が響き合う時がありました。」
カラーライントラウザー / 色のない道 忙しくあちらこちらと、瞳は映るもの全てを焼き付けようと動き顔は必死になってついて行くみたいな感じ。 好奇心に身を任せて流れる景色を見回しながら、 足だけは、目の前に伸びる道をただまっすぐに歩き続けました。 そこはパリの街角、たった一人。 緩やかな曲がり角にふと、惹きつけられたビンテージショップがありました。 店内へ入るとラックの中で一つ、数あるお洋服の中で5色のラインが彩りを放っていて、忙しなかった瞳は釘付けになって、気が付くと手に触れていました。 その瞬間、ここへ惹きつけられたその理由はこれだったのかと、思い込むには容易なほど心を奪われてしまいました。 たった一人で行く旅には、クローゼットの中へあの日のように気が付くと手を伸ばす。 だって自分の行くどんな道の先にも、無条件に期待できてしまうから。
カーキ色のシャツ / ミラー / マジックテープスニーカー / オフィスストリート 人々の息使いを感じました。その中でどこか冷たいような空気は、なぜだろうと思いました。 多分それは建物と、仕事をするための時間をここに生きている人たちが集まっていたからではないでしょうか。けれどなぜ、人々の呼吸を感じたのだろう。 カーキ色のシャツを着た私はきっと、静謐なこの街の空気に溶け込むことができていたのかもしれない。 そしてレンズ越しに被写体と、シャッターを切るそのほんの一瞬に、一体となるような感覚がしました。 どこの誰のものかもブランドも知らない、日本円で三千円ほどの古着のシャツは、当時の私にはなぜか、すごく心強く思えました。だから私は、どこへでも歩いて行きました。何駅分なら歩けるかな。時間があることだけはわかっていたから、ひたすらに歩きました。下手に吸水性のないそのシャツと。 地面の感触を伝える薄いソールのこの靴がもう、体の一部かのように感じるほどに。 歩いた軌跡は、全部そのものたちが知っていて、駆け出したり立ち止まったり、スキップしたり、つまずいたりした時も、傘を持たない土砂降りの日も、流した汗も何もかも。